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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

二人は、植ごみをまわって、そのかげに一区画別棟になっている木造洋館の玄関へ行った。日本の女中らしい女がとりつぎに出て来て、伸子たちは、応接間にとおされた。やや古風でくすんだ壁紙のはられたその広間の中央に大形の円テーブルがあって、その上に、家庭的な展覧会というように、ソヴェトから刊行されている種々の雑誌、新聞、書籍が並べられている。その奥の、もっとうす暗い、どっさり額のかかった室から、背の高さも、腹の太さも見上げるばかり大男のパルヴィン博士が出て来た。腰をかがめ、小人にあいさつするように伸子たちに握手した。灰色の上にすこし黄がかってドロリとした大きな二つの眼が愛嬌の笑いを下まぶたのしわにまでたたえながら二人の女の上にすえられた。伸子はその眼をみると、頭のどこかがジーンとするような途方にくれた気がした。霜降りの背広をきて、話のあい間には、両方のひじをふりひろげるようにもみ手をまじえるパルヴィン博士に、主として素子が日本語で旅行についての計画を話した。パルヴィン博士は、ロシア語と日本語とちゃんぽんに話し、素子に向って、

「あなたのロシア語は正しいロシア語です」