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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
勉強するときのほか、越智は食堂で雑談したし、客間で画集を見たりしている越智のまわりに、保も稚いつや子も出入りしていた。
保が東京高校へ入学したのは前年の春であった。その夏、若い越智夫婦が田舎にある佐々の家に暮し、伸子はあとからそのときの写真をみせられたことがあった。大柄の浴衣をきて、なめらかな髪を真中からわけて結び、やせがたで憂鬱な情熱っぽい純子という夫人が、白服できちんと立っている越智と並んでうつっていた。夫人のからだにあらわれている、しめっぽくて、はげしそうな表情も、越智の白い夏服の立襟をきちんとしめて、とりすましたような工合も伸子の気質の肌に合わなかった。普通にいえばよく似合っている縁無し眼鏡も、寸法どおりにきまって、ゆとりと味わいのない越智の顔の上にかかっていると、伸子は本能的に自分が感じている彼の人がらの、しんの冷たさや流動性の乏しさを照りかえしているように思うのだった。
そのスナップ写真を伸子と顔をよせあうようにしてしげしげ眺めながら、多計代が、
「伸ちゃん、お前、純子さんてひとを、どう思うかい?」
ときいた。伸子は、そのとき、母の唐突な質問に困った。