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ふたりのもうじん
二人の盲人
平林 初之輔
「祖国 第三巻第一二号」1930(昭和5)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,366 字 · 13 页
そればかりではない。始めのうちは、彼も自分では、わからなくても、世間の人に美しいと言われることに、一種の嬉しさ、肩身の広さを感じていた。だが、それは束の間だった。この嬉しさ、この肩身の広さは、やがて何とも言いようのない拷問に変わっていった。
崖の下で、同じ職業をしている、盲唖学校の同窓の藤木という男が、三日にあげずに彼の家へ遊びにきた。二人が点字で印刷した校友会雑誌を前において、同窓の友の噂をしたり、時には、政府の施政方針を、議論しあったりしているところを、外から聞けば、話してが、こんな不具者同士であるとは思われないほど快活で、元気だった。細君の千鶴子も不具者同士の話題に馴れて、いつも朗らかに調子を合わせていた。二人は、よそ眼にも羨ましい程の親友だった。
ところが、ある日、べつだん何も理由はなかったのだが、どうかしたはずみに、玄石は細君に対して、猜疑の心を抱くようになった。一たんそうした心理が、芽ばえてきたが最後、もうどうすることもできなかった。細君の一挙一動が、彼にとっては拷問の笞になった。
しかし、それには何の根拠もなかった。だから彼は口に出しては、何も言えなかった。