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にじゅうさんばんち
二十三番地
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,579 字 · 27 页
けれ共子供はほんとに寛大な公平なものだとよく思うが、親父さんに、
「おい又行くんか。
と云われても何でも、
「ええそうなのよ、
父ちゃん。
とか何とか実にスラスラと事を運んで、ケロッとした顔をして御飯に呼ばれるまでは遊んで行く。
大人もちょんびりでも心の隅にああ云う気持を持てたらさぞ愉快な事だろうと思われる。
普通の女同志のつき合の七面倒臭さに、同じ女ながら愛素をつかして居る私は、そう云う事を見ると、たまらなく羨しくなって来て、
ああだったらなあ。
とつい出て来るのである。
或る大変涼しい晩――もう秋の中頃がすぎて、フランネル一枚では風を引きそうな、星のこぼれそうな夜であった。
八月に生れた赤坊を一番奥の部屋でねかしつけて居ると、どっかで、多勢の男の声が崩れる様に笑うのが耳のはたでやかましくやかましく聞えて来た。
蚊をあおぎながら乳をのませて居た母は、
「どこだろうねえ、
山村さんかい。
随分にぎやかなんだねえ、
これじゃあ赤ちゃんも寝つかれまい。
と云いながら、ワッワッとゆれる様な音を気にしだした。
わきで本を見ながらかるく叩いてやって居たのだけれ共、あんまりひどいので、蒸して来るのを心配しながら硝子を閉めたり戸を立てたりして、フト気をつけると、どうしても孝ちゃんの家の方向である。