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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

たいして気にもとめていなかった『草の実』のことと同じく、消しがたいかげりをだんだんこくしていった。

六年生の秋の修学旅行は、時節がらいつもの伊勢まいりをとりやめて、近くの金毘羅ということにきまった。それでも行けない生徒がだいぶいた。働きにくらべて倹約な田舎のことである。宿屋にはとまらず、三食分の弁当をもってゆくということで、ようやく父兄のさんせいを得た。それでも二組あわせて八十人の生徒のうち、行けるというのは六割だった。ことに岬の村の子どもらときたら、ぎりぎりの日まできまらず、そのわけを、おたがいにあばきだしては、内情をぶちまけた。

「先生、ソンキはな、ねしょんべんが出るさかい、旅行に行けんので」

マスノがいう。

「だって、宿屋にはとまらんのですよ。朝の船で出て、晩の船でもどってくるのに」

「でも、朝の船四時だもん、船ん中でねるでしょう」

「ねるかしら、たった二時間よ。みな、ねるどころでないでしょうに。それよりマスノさんは、どうしてゆかんの」

「風邪ひくといかんさかい」

「あれあれ、大事なひとり娘」

「そのかわり、旅行のお金、倍にして貯金してもらうん」

「そうお、貯金はまたできるから、旅行にやってって、いいなさいよ」