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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「ほんとに、いよいよ泣きみそ先生と、思うでしょう」
そういって笑うと、ミサ子もいっしょに笑いながら、うながすように柄杓をさしだし、
「先生、さ、お水」
いつのまにまつったのか、摘み花のマユミの葉が茶碗に青くもりあがっていた。兵隊墓は丘のてっぺんにあった。日清 日露 日華 と順をおって古びた石碑につづいて、新らしいのはほとんど白木のままの朽ちたり、倒れているのもあった。そのなかで仁太や竹一や正のはまだ新らしくならんでいた。混乱した世相はここにもあらわれて、罪もなく若い生命をうばわれた彼らの墓前に、花をまつるさえ忘れていることがわかった。花立ての椿はがらがらに枯れて午後の陽をうけている。きちんと区画した墓地に、墓標だけがならんでいる新らしい兵隊墓。人びとの暮しはそこへ石の墓を作って、せめてものなぐさめとする力も今はなくなっていることを、墓地は語っていた。
それは大石先生の心にもひびくことであった。同じような夫の墓を思いながら、あちこちと春草の萌えだした中からタンポポやスミレをつんで供えると、二人はだまって墓地を出た。もう泣いてはいなかったが、うしろからぞろぞろついてくる子どもたちは、あいかわらずよびかけた。