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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

「どうですこれ、わたしが五年生になったとき先生にもらったんですよ皆さん。どうです、どうです」

わあと歓声があがり、

「先生、見そこないました。先生がマッちゃんだけにそんなひいきをしたの、知らなんだ、しらなんだ」

マスノの抗議にまた笑声があがった。しかし、先生は涙ぐんでそれを見ていた。

見せられて思いだしたその弁当箱に、いちども弁当をつめて学校へはこなかった松江のことが、修学旅行のとき、桟橋前の小料理屋で、てんぷらうどん一丁ッと叫んでいた松江の姿が、久しぶりに生きて動いて、いま目の前にいる松江とむすびつこうとしている。かわいそうだった松江、そのかわいそうさをくぐってきたことをじぶんの恥のように卑下しているような松江……。

ぼつぼつ料理が運ばれ出すと、松江はいち早く立ちあがった。ビールとサイダーを両手にもって、なれた手つきでついでまわる。それを見さだめてからマスノがいった。

「さ、先生のために、乾杯!」

マスノはまっさきにコップを干した。松江がつぐのをつづけて干してから、大きなためいきをし、

「ああ、ここに仁太やタンコがおったらなあ。そしたらもういうことないですな先生。