轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
今日は二百十日なのだ。そうと気がつくと、なんとなくあらしをふくんだ風が、じゃけんに頬をなぐり、潮っぽい香りをぞんぶんにただよわせている。岬の山のてっぺんがかすかにゆれ動いているようなのは、外海の波の荒さを思わせて、ちょっと不安にもなった。途中で自転車をおりねばならないかもしれぬからなのだ。そうなると自転車ほどじゃまものはない。しかし、だからといって今おりるわけにはもうゆかないのだと考えながら、いつしか、空想は羽のある鳥のように飛びまわっていた。
……風よ凪げ! アリババのようにわたしが命令をくだすと、風はたちまち力をぬいて、海はうそのように静まりかえる。まるで、いま眠りからさめたばかりの湖のような静かさです。橋よかかれ! さっとわたしが人さし指を前にのばすと、海の上にはたちまち橋がかかる。りっぱな、虹のようにきれいな橋です。わたしだけに見える、そして、わたしだけがとおれる橋なのです。わたしの自転車は、そっとその橋の上にさしかかります。わたしはゆっくりとペタルをふみます。あわてて海におちこむと大へんですから。こうして七色のそり橋をゆっくりと渡りましたが、いつもより四十五分も早く岬の村へつきました。