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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
さあ大へんです。わたしの姿を見た村の人たちは、いそいで時計の針を四十五分ほどすすめるし、子どもたちときたら、見るも気のどくなほどあわてふためいて、食べかけの朝飯をのどにつめ、あとはろくに食べずに家をとびだしました。わたしが学校につくと、いま起きだしたばかりの男先生はおどろいて井戸ばたにかけつけ、手水をつかいはじめるし、年とった奥さんは奥さんで、ねまきも着かえるまがなく七輪をやけにあおぎながら、片手で衿もとを合わせ合わせ、きまりわるそうなていさい笑いをし、そっと目もとや口もとをこすりました。目のわるい奥さんは、朝おきるといつも目やにがたまっているのです……
ここだけはほんとのことなので、思わずくすっと笑ったとき、空想は霧のように消えてしまった。ゆく手から、風にみだされながらいつもの声がきこえたのである。
「小石せんせえ」
ひと月ぶりの声をきくと、ぐっとからだに力がはいり、「はーい」と答えたものの、風はその声をうしろのほうへもっていったようだ。思ったとおり、外海の側は大きく波が立ちさわいでいて、いかにも厄日らしいさまを見せている。
「おそいのね、今日は。