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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

四十五分ぐらいおくれているかもしれないわよ」

それをきくと、なつかしそうに立ちどまって、何か話しかけそうにした子どもたちは、本気にして走りだした。先生のほうも、風にさからって、いっそう足に力をいれた。ときどき方向のきまらぬような舞い舞い風がふいてきて、何度も自転車をおりねばならなくなったりした。まったく、四十五分ほどおくれそうだ。海べの村でも一本松はいつも岬にまもられているかたちで、厄日にもたいしたことはないのにくらべると、細長い岬の村は、外海側の半分がいつも相当の害をうけるらしい。木々の小枝のちぎれてとびちった道を、自転車も難渋しながら進んだ。押して歩くほうが多かったかもしれぬ。こうして、ほんとうにずいぶんおくれて村にさしかかったのであったが、村中が一目で見えるところまできて、先生は思わず立ちどまって叫んだ。

「あらッ」

村のとっつきの小さな波止場では、波止場のすぐ入り口で漁船がてんぷくして、鯨の背のような船底を見せているし、波止場にはいれなかったのか、道路の上にも幾隻かの船があげられていた。海から打ちあげられた砂利で道はうずまり、とうてい自転車などとおれそうもないほど荒れているのだ。