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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「わあ、おなご先生ェ」
それは、ついこないだまで教えてもらっていた小林先生である。いつもはさっさとすれちがいながらおじぎを返すだけの小林先生も、今日は立ちどまって、なつかしそうにみんなの顔をかわるがわる見まわした。
「今日で、ほんとにおわかれね。もうこの道で、みんなに出あうことはないわね。よく勉強してね」
そのしんみりした口調に涙ぐんだ女の子もいた。この小林先生だけは、これまでの女先生の例をやぶって、まえの先生が病気でやめたあと、三年半も岬の村を動かなかった先生であった。だから、ここで出あった生徒たちは、いちどは小林先生に教わったことのあるものばかりだ。先生がかわるというようなことは、本来ならば新学期のその日になってはじめて分かるのだが、小林先生は、かた破りに十日もまえに生徒に話したのである。三月二十五日の修業式に本校へいった帰り、ちょうど、いま、立っているこのへんで、別れのことばをいい、みんなに、キャラメルの小箱を一箱ずつくれた。だからみんなは、今日この道を新らしい女先生が歩いてくるとばかり思っていたのに、それを迎えるまえに小林先生にあってしまったのである。