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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

あとへ来手がなかったりすると、なおこまる」

「ちんばになんぞ、ならにゃえいがなァ。若い身空で、ちんばじゃ、なおっても、かようにこまるじゃろな」

こんなふうに女先生の噂をした。どうしてももういちど岬の学校へきてもらいたい気持がふくまれていた。きてもらわないと、ほんとに困るのだ。直接に、もっとも困ったのは男先生だった。小さな村の小学校では、唱歌は一週一度だった。その一時間を、男先生はもてあましたのだ。女先生が休みだしてから、はじめのうちは、ならった歌を合唱させたり、じょうずらしい子どもに独唱させたりした。そうしてひと月ほどはすんだが、いつまでもごまかすわけにもゆかず、そこで男先生はとうとうオルガンのけいこをはじめ、そのために汗を流した。先生は声をあげて歌うのである。

ヒヒヒフミミミ イイイムイ――

ドドドレミミミ ソソソラソ――と発音するところを、年よりの男先生はヒヒヒフミミミ――という。それは昔、男先生が小学校のときにならったものであった。

ミミミミフフフ ヒヒフミヒ――

唱歌は土曜日の三時間目ときまっている。うれしくたのしく歌ってわかれて、日曜日をむかえるという寸法の時間割であったのが、子どもにとっても先生にとっても、きゅうにおもしろくない土曜日の三時間目になってしまった。