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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「なんぼバスが早うても、一分間のはずがないわ、なァ」
みんなの反対にあうと、仁太はむきになり、
「そやってぼく、氏神さまのとこで食いかけたまんじゅうが、バスをおりてもまだ、ちゃんと手に持っとったもん」
「ほんまか?」
「ほんまじゃ」
「ゆびきりじゃ、こい」
「よし、ゆびきりするがい」
それで、みんなは安心をした。仁太が生まれてはじめてのったバスのめずらしさに、まんじゅうを食べるのも忘れて、運転手の手もとを見ていたなど、だれも考えなかった。ただ、ともかくも仁太だけがバスにのったことと、一本松のまだつぎの町でおりるまで、まんじゅう一つを食べるまがなかったことと、この二つからわりだして、氏神さまから一本松までの遠さを、たいしたことではないと思った。たとえ自転車にのってとはいえ、女先生は毎日、あんなに朝早く、一本松からかよっていたではないか。と、そんなことも遠さとしてより、近さとしてみんなの頭に浮かんだらしい。そんな気持の動いているときに、対岸の海ぞい道にバスが走っているのが見えたからたまらない。小さく小さくみえるバスは、まったく、あっというほどのまに走って林の中へ姿を消した。