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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

だからただひとり、森岡正のズックを見つけると、みんなの目はそこにそそがれてさわいだ。

「わァ タンコ、足が光りよる。ああばば(まぶしいこと)」

いわれるまえから正は気がひけていた。はいてこなければよかったと後悔するほど恥ずかしかった。女のほうでは小ツルがひとりだった。靴は、足をかわすたびにぶかぶかとぬげそうになった。小ツルはとうとうズックを手にもって、はだしになり、うらめしそうに靴をながめた。六年生の女の子がじぶんのぞうりと取りかえてやりながら、大声で、

「わあ、十文半じゃもん、わたしにでも大きいわ」

おそらく三年ほどもたせるつもりで買ってやったのだろうが、小ツルはもうこりこりしていた。ぞうりのほうがよっぽど歩きよかったのだ。ほっとしている小ツルに、松江は笑いかけ、

「な、コツやん、べんとが、まだ、ここで、ぬくいぬくい」

そういって腰のあたりをたたいてみせた。

「百合の花の弁当箱?」

小ツルが、いつ買ったのだ、という顔で問うのを、松江は気弱くうけ、

「ううん、それは明日お父つぁんが買うてきてくれるん」

そういってしまって、松江ははっとした。三日前のことを思いだしたのだ。