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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

小さいからだをツブテのように走らせながら、彼女の心には一つのたのしみがふくらんできた。それは指きりしてもよいといった母のことばだった。産婆さんの家は本村のとっつきにあった。帰りは途中まで自転車にのせてくれ、少し上り坂のところまでくると、年とった産婆さんは自転車をとめ、

「おまえは、ここでおりてくれ。一刻も早ういかんならん」

松江はこっくりして、自転車のあとから走った。自転車はみるみる遠ざかり、すぐに山の中へ消えていった。大石先生の自転車いらい、女の自転車もようやくはやりだして、今ではもう珍らしくはなかったが、それだけに走りさった産婆さんの自転車を見て、毎日朝早く起きて、てくてく、町まで歩いて仕事にゆく父親にも、自転車があれば、どれほど助かるかと、ふと思った。

走って帰ると、もう赤ん坊は生まれていた。いそがしそうに襷がけで水をくんでいたよろずやのおばさんは、松江を見るなりいった。

「マッちゃんよ、お前、えらかろうが、大いそぎで釜の下たいておくれ」

バケツのまま釜に水をあけてから、小声で、

「こんまい女の子じゃ。月たらずじゃといな。でも、ええじゃないか、なあマッちゃん。