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にひゃくとおか

二百十日

小川 未明

「小学六年生」1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,094 字 · 11 页

青空文庫

「かまわずにおきましょうか。」

しかし、おじいさんには、知らぬ顔をしていることができませんでした。

「あちらの塀へ上がれば、とどくだろう。」

「僕、やだなあ。」

「いい子だから、助けておやり。なんでもおまえのほしいものを買ってやるから。」と、おじいさんは、いいました。

「ほんとう? おじいさん、僕にハーモニカ買ってくれる。」と、正二は、聞きました。このあいだから、おじいさんに、ねだっている品です。

「買ってやるから、助けておやり。」と、おじいさんは、いいました。

これを聞くと、正二は、一時は、うれしそうな顔つきをしましたが、急になんと思ったか、

「いいよ、おじいさん、僕買ってくれなくてもいいの。」といいながら、さおをかついで、隣の家の門を開けて入っていきました。

ちょうどそのとき、そろそろと糸を伝って、大きな黒いくもが、やんまに迫っていました。

これを見た正二は、急いで、塀へ上がると、

「こいつめ。」といいながら、さおでまずやんまを払い、つぎにくもを落としました。巣がずたずたに切れて、やんまは、やっと飛んでいくことができたし、くもはちぢこまって下へ落ちました。