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きょうのしき

京の四季

和辻 哲郎

「新潮」1950(昭和25)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,914 字 · 16 页

青空文庫

書斎の窓をあけると、驚くような美しい黄葉が目に飛び込んで来る。一歩家の外に出ると、これまで注意しなかったいろいろな樹が、美しく紅葉しかけている。それが毎日のように変わって行く。十月の下旬になると、周囲がいかにも華やかな、刺戟の多い気分になって、書斎の中に静かに落ちついていることができなくなった。これは飛んだところへ引っ越して来た、と幾分あわてるような気持ちにさえなった。

そういう紅葉の代表的なのは楓の紅葉で、その楓の樹は家の前の池のまわりに数十本植えてあった。その楓の種類が多く、新芽の出る時期や新芽の色が一々違っていることは、前にちょっと述べたが、紅葉の時にまたその相違が現われてくる。真紅になるのもあれば、紅の要素が非常に少なく、ほとんど黄色に近いのもある。芽の色に赤味が勝っていた樹は、紅葉の時の赤みも濃い、というような関係も目立ったが、また芽の出の最も遅かった樹がまっ先に紅葉するというような、逆の関係も目についた。年によると、この相違が非常に強く現われ、早い樹はもう紅葉が済んで散りかけているのに、遅い樹はまだ半ば緑葉のままに残っている、というようなこともあった。