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ひとをのろわば
人を呪わば
国枝 史郎
「探偵趣味」1926(大正15)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,223 字 · 7 页
二
同僚、無言で新聞を拡げる。
競争相手のA社の新聞!
一号活字、二段抜。
「西警察署の大捕物」
――ちゃんと綺麗に素破抜かれている。
「一條君!」
と部長の声!
そうさね、まるで雷のように響いた。
好漢一條氏の悄気方と来たら。
直立不動。部長の前。
部長美髯をひねり上げる。
「君、昨日は何うしたんだい?」
「え、実は、頭痛がして」
「家で静養でもしたのかい?」
「ええ、そうなので……医者を呼んで」
「不思議だね、こいつは不思議だ」部長ひどく不思議がる。「使をやったら不在と云ったが……」
やッ、一條の周章てまいことか!
「そ、それじゃあ、その時には……」
「よろしい!」と部長一喝する。「以後注意! 素破抜かれないように!」
一條一散に自席へ帰る。
さて、原稿紙は拡げたが、一体書くことがあるのだろうか?
その日一日マゴマゴする。
あっちへ行っては冷かされ、こっちへ行ってはこづき廻される。
退社時間。午後の四時。
一條そろそろ元気づく。
二
三四人悪友が集まって来る。
「おい、一條へカツを入れてやれ」
「悄気るな悄気るな、行こう行こう」
「ワーッ」というので飛び出して了う。
さて行先は? 珍しくもない、たこ梅というおでん屋だ。