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じんたいかいぼうをみるのき
人体解剖を看るの記
海野 十三
「シュピオ」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,432 字 · 17 页
いつぶっ倒れるかしれないといった不安が、僕を脅かした。このまま室を出ていった方が恥を曝さないですむぜ、と囁く声が聞えるようであった。
でも、折角ここまで怺えたのである。しかも僕とても、将来このような人体を対象として研究をつづけなければならぬ職をもつ身ではないか。そう思うと、このまま出てゆくことが躊躇せられるのであった。
「いよいよいけなくなったら、この階段に横にゴロリと寝てしまおう」
僕はそう思った。
そうこうしているうちに、警察医はもうすっかり身仕度をととのえた。襯衣を肘の上までまくり上げ、手には長いゴム手袋をはめ、その上にまたもう一つ、白い絹らしい布で出来た手袋をはめていた。そして胸には、白い手術着をつけた。それだけであった。病人の手術とは違って、それは実に簡単な服装だった。
それから警察医は、大きな鞄の口をあけた。中からは、果して解剖器具の入った大きな銀色の函を取り出した。蓋を払ってから、彼は中からメスを何本かと、その外なにかよく分らないが、ピカピカ光るいろいろの器具や、糸などを取出し、それを屍体が載っている解剖台の上に置いた。ガチャガチャと金属製の器具がすれ合う音を聞いていると、いよいよいけなかった。