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じんみんのためにささげられたしょうがい

人民のために捧げられた生涯

宮本 百合子

「愛情はふる星のごとく」のあとがき、尾崎秀実著、世界評論社、1946(昭和21)年9月発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,301 字 · 3 页

青空文庫

尾崎秀実氏が獄中から書かれた書簡集がまとめられることになった。それについて、短い文章を書くようにとの依頼をうけた。

尾崎氏とその家族のために、永年心をつくしていられる友人たちは、決して少くないのである。それを思うと、私が何かを書くということは、ふさわしくないと遠慮された。しかし、夫人の御気持からもときき、『人民評論』二月号に「愛情は降る星の如く」という題で掲載された尾崎氏の書簡の一部を再びよみかえした。第一審判決後の第一信に「裁判長の趣意は、今の私の立場も心境も充分認めた上、命をもって国民に詫びよ、というのです」と平静に告げられている。そのくだりを読んだとき、私の心には一つの叫びがあった。「命をもって詫びよ。それは尾崎氏らを殺した人々に向ってこそ、国民が今日求める償いである。」そして、私は諒解したのであった。この心もちに、自由と正義を求めるすべての人民の情熱が凝っているのだ、と。

世界に類のない日本の治安維持法は、昭和三年に制定され、撤廃される二十年末までの十七年間に、約十万人の優秀な人々を犠牲とした。そして、日本を輿論のない軍力専制の鎖につないで、遂に歴史的な破局に導いた。