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じんせいせいかいいん
人生正会員
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,238 字 · 23 页
「迚も/\。叱られます」
と僕は固辞した。
それから間もなく庶務課長の広瀬さんが再婚した。この人はもう一年余り鰥暮しをしていた。基督信者だから、社長のように出家の発心もしなかった。奥さんは三年患い続けて死んだのである。諦めが好い次第だ。今度は若くて綺麗なのを貰ったという評判だった。再婚は大抵内輪だけで済ます。広瀬さんは社長室へ来て、事後報告をして行った。
「はてね。広瀬君は見違えた。一年で糟糠の妻を忘れるような男かな?」
と社長は後から首を傾げた。
「大丈夫でしょう。広瀬さんは基督信者ですから」
と僕は興味を持って弁護の労を執った。
「基督信者なら、尚更のことじゃないか? 基督信者は一夫一妻の筈だぜ」
「そうです。その点は仏教なんかと違って、頗る厳重です」
「仏教なんかとは何だ?」
社長は数珠でテーブルを叩いた。ダン/\仏教が荒っぽくなって来る。
「他の宗教と違ってという意味でした」
「仏教だって一夫一妻だよ。君はマホメット教あたりと勘違いをしているんじゃないか?」
「マホメット教は公認的に一夫多妻ですけれど」
「基督教の一夫一妻も当てにならない。妻を亡くした後に又妻を貰えば、何う勘定しても、一夫二妻になる」