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じんせいろんノート

人生論ノート

三木 清

下記以外「文學界」文藝春秋社、1938(昭和13)年6月~1941(昭和16)年10月<br>個性について「哲學研究 第五十二號 第五卷 第七册」京都哲學會、寶文館、1920(大正9)年7月1日<br>後記「人生論ノート」創元社、1941(昭和16)年8月11日<br>旅について 不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 页

青空文庫

といったとき、彼がキリストになったのでなく、彼が真に彼自身になったのであることを理解する。私の個性は更生によってのみ私のうちに生れることができるのである。

哲学者は個性が無限な存在であることを次のように説明した。個性は宇宙の生ける鏡であって、一にして一切なる存在である。恰も相集まる直線が作る無限の角が会する単一な中心の如きものである。すべての個別的実体は神が全宇宙についてなした決意を表わしているのであって、一個の個性は全世界の意味を唯一の仕方で現実化し表現するミクロコスモスである。個性は自己自身のうちに他との無限の関係を含みつつしかも全体の中において占めるならびなき位置によって個性なのである。しからば私は如何にして全宇宙と無限の関係に立つのであるか。この世に生を享けた、または享けつつある、または享けんとする無数の同胞の中で、時空と因果とに束縛されたものとして私の知り得る人間はまことに少いではないか。この少数の人間についてさえ、彼等のすべてと絶えず交渉することは、私を人間嫌いにしてしまうであろう、私はむしろ孤独を求める。しかしながらひとは賑かな巷を避けて薄暗い自分の部屋に帰ったとき真に孤独になるのではなく、却って「ひとは星を眺めるとき最も孤独である」