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じんせいろんノート

人生論ノート

三木 清

下記以外「文學界」文藝春秋社、1938(昭和13)年6月~1941(昭和16)年10月<br>個性について「哲學研究 第五十二號 第五卷 第七册」京都哲學會、寶文館、1920(大正9)年7月1日<br>後記「人生論ノート」創元社、1941(昭和16)年8月11日<br>旅について 不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 页

青空文庫

もとより人間は単に特殊的なものでなく同時に一般的なものである。しかし生の有する一般性は死の有する一般性とは異っている。死の一般性が観念の有する一般性に類するとすれば、生の一般性は想像力に関わるところのタイプの一般性と同様のものである。個性とは別にタイプがあるのでなく、タイプは個性である。死そのものにはタイプがない。死のタイプを考えるのは死をなお生から考えるからである。個性は多様の統一であるが、相矛盾する多様なものを統一して一つの形に形成するものが構想力にほかならない。感性からも知性からも考えられない個性は構想力から考えられねばならぬ。生と同じく幸福が想像であるということは、個性が幸福であることを意味している。

自然はその発展の段階を昇るに従って益々多くの個性に分化する。そのことは闇から光を求めて創造する自然の根源的な欲求が如何なるものであるかを語っている。

人格は地の子らの最高の幸福であるというゲーテの言葉ほど、幸福についての完全な定義はない。幸福になるということは人格になるということである。

幸福は肉体的快楽にあるか精神的快楽にあるか、活動にあるか存在にあるかというが如き問は、我々をただ紛糾に引き入れるだけである。