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じんせいろんノート
人生論ノート
三木 清
下記以外「文學界」文藝春秋社、1938(昭和13)年6月~1941(昭和16)年10月<br>個性について「哲學研究 第五十二號 第五卷 第七册」京都哲學會、寶文館、1920(大正9)年7月1日<br>後記「人生論ノート」創元社、1941(昭和16)年8月11日<br>旅について 不詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 页
孤独について
この混合から新しい形が出てくるであろう。形の生成は綜合の弁証法であるよりも混合の弁証法である。私のいう構想力の論理は混合の弁証法として特徴附けられねばならぬであろう。混合は不定なものの結合であり、その不定なものの不定性の根拠は虚無の存在である。あらゆるものは虚無においてあり、且つそれぞれ特殊的に虚無を抱いているところから混合が考えられる。虚無は一般的な存在を有するのみでなく、それぞれにおいて特殊的な存在を有する。混合の弁証法は虚無からの形成でなければならぬ。カオスからコスモスへの生成を説いた古代人の哲学には深い真理が含まれている。重要なのはその意味をどこまでも主体的に把握することである。
孤独について
「この無限の空間の永遠の沈黙は私を戦慄させる」(パスカル)。
孤独が恐しいのは、孤独そのもののためでなく、むしろ孤独の条件によってである。恰も、死が恐しいのは、死そのもののためでなく、むしろ死の条件によってであるのと同じである。しかし孤独の条件以外に孤独そのものがあるのか。死の条件以外に死そのものがあるであろうか。その条件以外にその実体を捉えることのできぬもの、――死も、孤独も、まことにかくの如きものであろうと思われる。