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じんせいろんノート

人生論ノート

三木 清

下記以外「文學界」文藝春秋社、1938(昭和13)年6月~1941(昭和16)年10月<br>個性について「哲學研究 第五十二號 第五卷 第七册」京都哲學會、寶文館、1920(大正9)年7月1日<br>後記「人生論ノート」創元社、1941(昭和16)年8月11日<br>旅について 不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 页

青空文庫

瞑想について

瞑想について

たとえば人と対談している最中に私は突然黙り込むことがある。そんな時、私は瞑想に訪問されたのである。瞑想はつねに不意の客である。私はそれを招くのでなく、また招くこともできない。しかしそれの来るときにはあらゆるものにも拘らず来るのである。「これから瞑想しよう」などということはおよそ愚にも附かぬことだ。私の為し得ることはせいぜいこの不意の客に対して常に準備をしておくことである。

思索は下から昇ってゆくものであるとすれば、瞑想は上から降りてくるものである。それは或る天与の性質をもっている。そこに瞑想とミスティシズムとの最も深い結び附きがある。瞑想は多かれ少かれミスティックなものである。

この思い設けぬ客はあらゆる場合に来ることができる。単にひとり静かに居る時のみではない、全き喧騒の中においてもそれは来るのである。孤独は瞑想の条件であるよりも結果である。例えば大勢の聴衆に向って話している時、私は不意に瞑想に襲われることがある。そのときこの不可抗の闖入者は、私はそれを虐殺するか、それともそれに全く身を委せてついてゆくかである。瞑想には条件がない。