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じんせいろんノート
人生論ノート
三木 清
下記以外「文學界」文藝春秋社、1938(昭和13)年6月~1941(昭和16)年10月<br>個性について「哲學研究 第五十二號 第五卷 第七册」京都哲學會、寶文館、1920(大正9)年7月1日<br>後記「人生論ノート」創元社、1941(昭和16)年8月11日<br>旅について 不詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 页
我々にとってこれは羨望に価することではないであろうか。
道徳の中にも手工業的なものがある。そしてこれが道徳の基礎的なものである。
しかし困難は、今日物的技術において「道具」の技術から「機械」の技術に変化したような大きな変革が、道徳の領域においても要求されているところにある。
作ることによって知るということが大切である。これが近代科学における実証的精神であり、道徳もその意味において全く実証的でなければならぬ。
プラトンが心の秩序に相応して国家の秩序を考えたことは奇体なことではない。この構想には深い智慧が含まれている。
あらゆる秩序の構想の根柢には価値体系の設定がなければならぬ。しかるに今日流行の新秩序論の基礎にどのような価値体系が存在するであろうか。倫理学でさえ今日では価値体系の設定を抛擲してしかも狡猾にも平然としている状態である。
ニーチェが一切の価値の転換を唱えて以後、まだどのような承認された価値体系も存在しない。それ以後、新秩序の設定はつねに何等か独裁的な形をとらざるを得なかった。一切の価値の転換というニーチェの思想そのものが実は近代社会の辿り着いた価値のアナーキーの表現であった。