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じんぞうにんげんエフし

人造人間エフ氏

海野 十三

「ラヂオ子供のテキスト」日本放送協会出版、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,879 字 · 109 页

青空文庫

地下室へくだる階段は、もうすっかり闇の中に沈んでいたが、マリ子は兄にあいたい一心で、とんとんとんとかけくだった。階段をおりると、そこにはまた広い廊下があった。そして大きな扉をもった室がいくつもあった。

一番ちかい部屋の扉の前に立って、マリ子はこわごわ室内の様子をうかがった。扉のむこうは、しずかであった。人のいるようなけはいはしなかった。

(この部屋ではないらしいわ)

マリ子は、おびえたように、扉を見なおすと、“倉庫”という文字が、マリ子にもよめた。

「あら、ここは倉庫なんだわ」

マリ子は、足早に、廊下を歩いて、次の部屋の前に立った。すると、部屋の中から、じいじいじい、じいじいじいというかなり高い物音がひびいてきた。

そこには“人造人間エフ氏の室”と書いてあった。

(まあ、人造人間エフ氏の室、兄さんはここにいるのじゃないかしら)

マリ子は、おもいきって、扉をとんとんと叩いた。

「兄さん、正太兄さん。マリ子ですわ」

マリ子は、そういって、しばらく返事をまった。

しかしどうしたものか、マリ子のまっていた返事はきかれなかった。ただ扉の向うでは、あいかわらずじいじいじいと奇妙な物音がしつづけであった。