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じんぞうにんげんエフし

人造人間エフ氏

海野 十三

「ラヂオ子供のテキスト」日本放送協会出版、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,879 字 · 109 页

青空文庫

「うむ、よく分った。むし歯のある人造人間なんて聞いたことがないからね。お前さんのむし歯も、ふだんは困ったものだが、こういうときにはたいへん役に立つよ。わっはっはっ」

大辻は、また大きなこえをたてて笑いだした。

これで分った。正太は、自分の口をあけて、大辻にむし歯を見せたのであった。人造人間にむし歯があるはずはないから、それで正太がエフ氏でないことが分ったのである。

「それはいいが、大辻さんはエフ氏を逃がしてしまったらしいね」

「そうなんだ、ちときまりが悪いがね」

「どっちへ逃げたんだろう。エフ氏はマリ子をつれていたかい」

「いいや、マリ子さんは見えなかった」

「じゃマリ子をどうしたんだろう」

「なにしろ、エフ氏というやつは、足も早いし、力もたいへんつよい。じつに強敵だ」

「ははあ大辻さんは、エフ氏がおそろしくなったんだね」

「いや、おそれてはいない。ただ、あの怪物は、よくよく手におえない奴だということさ」

そういっている間にも、正太は山道のうえをしきりにきょろきょろ見まわしていたが、このとき大きなこえで叫んだ。

「うむ、マリ子もやっぱり人造人間エフ氏につれられていったのだ。