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じんぞうにんげんじけん
人造人間事件
海野 十三
「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,654 字 · 30 页
「……海面ハ次第ニ浪立ッテキタ」
呀ッという声が、一座の中から発した。
「おお大変だ。人造人間が動きだしたぞ」
「こっちへどいた」
ガチャンガチャンと金属音を発して、人造人間は函の中から一歩外に出た。まるで魂が入ったもののようであった。
帆村は青い顔をして読みつづける。
「砲声ハマスマス激シサヲ加エテイッタ――」
「砲声」というと、人造人間はユラユラと三歩前進してとうとう室の中央へ出てきた。一座は鳴りをしずめ、片隅に互いの身体をピッタリより添わせた。
「墨汁ヲ吹イタヨウニ、砲煙ガ波浪ノ上ヲ匐ッテ動キダシタ」
何にも動かぬ。
「重油ハプスプス燃エヒロガッテユク」
「重油」――という所で、人造人間はクルリと左へ向いた。
「砲弾モ炸裂スル。爆弾モ毒瓦斯モ……」
「爆弾」――というと、人造人間はツツーと駛って、博士の寝台のすぐ前でピタリと停った。これを見ている一同の顔には、アリアリと恐怖の色が浮んだ。
「……恐ロシイ爆音ヲアゲテ、休ミナク相手ノ上ニ落チタ。的ヲ外レテ落チタ砲弾ガ空中高ク水柱ヲ奔騰サセル。煙幕ハヒッキリナシニ……」
うわーッ。
一同の悲鳴。「煙幕」というところで、人造人間は鋼鉄の太い右腕をふりあげて、エイヤエイヤと寝台の上を打つのであった。