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にんげんさんすいずまき

人間山水図巻

吉川 英治

「東京 創刊号」1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,343 字 · 21 页

青空文庫

日本でも年表にしばしば出てくる奈良、平安朝の「諸国に盗賊蜂起し」の時代から、つい近世の野武士や押込み流行などの頃まで、世がみだれれば必ずそれの出現はあったことであり、中国とは正に弟たり難し兄たり難しといってよいかもしれない。だが何といっても、緑林の徒の横行ぶりも、中国には一日の長がみえ、またどこやらに愛嬌があったり、その一部人間性にたいして寛大な風のあったりするのも中国である。盗児をさして梁上の君子とよんだ文化人は欧羅巴にも見あたらないようだ。世の中がよくさえなれば彼等の大部分は良民に回るはずのものだということを、中国のひとは易学的に自然達観しているのかもしれない。日本にしても、悪に強ければ善にも強いという言葉があるくらいだから、つまるところ両国の盗児観は、世の中次第――という点で結局一致しているものとも考えられる。

前措きが長くなったが、私のこの小篇は、そんな社会課題をとり上げたという程な作ではなく、稀手近な書から宋代の緑林挿話の小素材をひろい上げ、それに些か潤色を加えてみたまでのものである。

北宋の世は百六十年もつづいたので、長く北宋に仕えて、生れながらの家門や栄達の保証に恃みきっていた宋家の朝臣や武人たちは今更のように、国の興亡とはこんなにも脆いものであったかと痛感しながら、落魄れた身を一変した世