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ものをこわすのがしょうばいじけん
什器破壊業事件
海野 十三
「大洋」1939(昭和14)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页
彼女は、すこし待ちくたびれて、眠気を催した。欠伸が出て来たので、あわてて手を口に持っていったとき、突然思いがけなくも、彼女が腰をかけているすぐ傍の扉が、カレンダーごと、ごとんと奥へ開いた。そして一人の長身の紳士が、ぬっと立ち現れた。その手には写真の印画紙らしいものを二三枚もっているが、いま水から上げたばかりと見えて水滴がぽたぽた床のうえに落ちた。
(奥から出てきたこの人は、一体誰だろう?)と、風間光枝は心の中に訝った。
「やあ、どうも。たいへん早く来てくだすってありがとう。星野先生は、ちかごろずっと元気ですか」
「はあ。さようでございます」
「それは結構です」といって、その長身の紳士は光枝の前の椅子に腰を下ろして、じろじろこっちを見た。まだ光枝が名乗りもしないのに、紳士の方では、彼女のことを先刻知っているといったような態度を示しているのだ。どことなく薄気味わるさが、彼女の背筋に匐いあがってくる。
「失礼でございますが、貴方さまが帆村――帆村先生でいらっしゃいますか」
「ははあ、僕が帆村です」と無造作に答えて、「風間さんの背丈は、皮草履をはいたままで一メートル五七、すると正味は一メートル五四というところで、理想型だ」