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あだうたれげさく

仇討たれ戯作

林 不忘

「オール読物」1934(昭和9)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,726 字 · 21 页

青空文庫

が出版されれば、髪結床でも銭湯でも人の寄り場はどこへ行っても、この作の評判で持ちきりだろうと思うと六樹園は苦笑しながらもいい気もちだった。ことに敵うち物の不快な横行に対する腹いせの意味も偶して「敵討記乎汝」とやったところはわれながら上できだと思った。

六樹園は苦笑をふくみながらさっそく筆を下ろした。暢達の文人だけに運筆は疾かった。ただ難かしくなるまいなるまいとたえず用心した。いかにして愚劣なものを書くべきかと努力した観があった。それはこういう思いきり洒落のめした物語であった。

名門好みの高慢な若い男があった。天下に名を轟かして味噌を上げたいと心がけたすえ、まず兵法を習ったが失敗して、書を学んで成らず、つぎに役者を志したはいいが、たった初日一日が一世一代の冷飯に終ったので、今度は男伊達を真似たものの、似た山と嘲られて色事師に転じた。そして振られ抜いたあげく、これではならぬとやむをえず今度は一つ悪狐を退治して名を揚げようと野原へ出た。

そこで過って伯父の小鍛冶宗遠を殺め、仇敵と狙われることになったのをいいことに、敵討興行の看板を揚げて勝負をしようとしたところが、自分に余計な助太刀があらわれて相手を返り討ちにしてしまった。