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あだうたれげさく
仇討たれ戯作
林 不忘
「オール読物」1934(昭和9)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,726 字 · 21 页
」
六樹園は明らかに、嫌な顔をした。三馬は構わずにつづけた。
「当節流行の合巻のはじまりは、あっしの「雷太郎強悪物語」でげすが、あれは浅草観音利益仇討というまくら書きがありやすとおり、敵うち物でげす。宇田川町とは友達でげすので、まあ宇田川町の尻馬に乗ったようなものでげす。かつは西宮にそそのかされて雷太郎強悪物語十冊ものを前後二篇、合巻二冊に分けて売り出しやしたが、これは大当りを取りやしたな。」
ほとんど無邪気なほど三馬は得意気にそう言った。西宮というのは本材木町一丁目西宮新六という書舗であった。三馬の口から共鳴を得ようと思っていた六樹園は失望してその嬉しそうな三馬の顔を侮蔑をこめて見つめた。
「それに味を占めて敵討物はその後も二、三物しやした。箱根霊験蹇仇討、有田唄お猿仇討、それから二人禿対仇討、鬼児島誉仇討、敵討宿六娘、ただいまは力競稚敵討てえ八巻物を書いておりやす。」
「ほほう、それでは宇田川町にもあえて劣りますまい。お盛んなことで。」
と六樹園は皮肉を含ませて言ったが三馬にはそれが通じたのか通じないのかすまして答えた。
「なに、それほどでもげえせん。