轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

「講談雑記」1936(昭和11)年1月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 页

青空文庫

堅く眼を閉じてはいたけれど、あやめの泣いていることが感じられる。

(決して嫌いな女ではない)

なかば恍惚となった心の中で、ふと主税はそう思った。

(綺麗で、情熱的で、覇気があって、家格も血統も立派なあやめ! 好きな女だ好きな女だ! ……云いかわしたお八重という女さえなければ……)

恋人ともなり夫婦ともなり、末長く暮らして行ける女だと思った。

(しかもこのように俺を愛して!)

カッと胸の奥の燃えるのを感じ、全身がにわかに汗ばむのを覚えた。

(いっそあやめと一緒になろうか)

悲しみを含んだ甘い感情が、主税の心をひたひたと浸した。

あやめは涙の眼を見張って、主税の顔を見詰めている。

涙の面紗を通して見えているものは、畳の上の主税の顔であった。男らしい端麗な顔であった。わけても誘惑的に見えているものは、潤いを持ったふくよかな口であった。

いつか夕陽が消えてしまって、野は黄昏に入りかけていた。少し開いている障子の隙から、その黄昏の微光が、部屋の中へ入り込んで来て、部屋は雀色に仄めいて見え、その中にいる若い男女を、悩ましい艶かしい塑像のように見せた。

横倒しになっている主税の足許に、その縁を白く微光らせながら、淀屋の独楽が転がっている。