轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いまどしんじゅう
今戸心中
広津 柳浪
「文芸倶楽部」1896(明治29)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,688 字 · 74 页
またお前さんの小遣いぐらいは、どうにでもなりますからね、気を落さないように、よござんすか」
善吉は何で吉里がこんなことを言ッてくれるのかわからぬ。わからぬながら嬉しくてたまらぬ。嬉しい中に危ぶまれるような気がして、虚情か実情か虚実の界に迷いながら吉里の顔を見ると、どう見ても以前の吉里に見えぬ。眼の中に実情が見えるようで、どうしても虚情とは思われぬ。小遣いにせよと言われたその紙入れを握ッている自分の手は、虚情でない証拠をつかんでいるのだ。どうしてこんなことになッたのか。と、わからないながらに嬉しくてたまらず、いつか明日のわが身も忘れてしまッていた。
「善さん、私もね、本統に頼りがないんですから」と、吉里ははらはらと涙を零して、「これから頼りになッておくんなさいよ」と、善吉を見つめた時、平田のことがいろいろな方から電光のごとく心に閃めいた。吉里は全身がぶるッと顫えて、自分にもわからないような気がした。
善吉はただ夢の中をたどッている。ただ吉里の顔を見つめているのみであッたが、やがて涙は頬を流れて、それを拭く心もつかないでいた。
「吉里さん」と、廊下から声をかけたのは小万である。