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いまどしんじゅう

今戸心中

広津 柳浪

「文芸倶楽部」1896(明治29)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,688 字 · 74 页

青空文庫

「いよいよ明日が煤払きだッてね。お正月と言ッたッて、もう十日ッきゃアないのに、どうしたらいいんだか、本統に困ッちまうよ」

「どうせ、もうしようがありゃアしないよ。頼まれるような客は来てくれないしさ、どうなるものかね。その時ゃその時で、どうかこうか追ッつけとくのさ」

「追ッつけられりゃ、誰だッて追ッつけたいのさ。私なんざそれが出来ないんだから、実に苦労でしようがないよ。お正月なんざ、本統に来なくッてもいいもんだね」

「千鳥さんはそんなことを言ッたッて、蠣殻町のあの人がどうでもしておくれだから、何も心配しなくッてもいいじゃアないかね」

「どうしてどうして、そんなわけに行くものかね。大風呂敷ばッかし広げていて、まさかの時になると、いつでも逃げ出して二月ぐらい寄りつきもしないよ。あんなやつアありゃしないよ」

「私しなんか、三カ日のうちにお客の的がまだ一人もないんだもの、本統にくさくさしッちまうよ」

「二日の日だけでもいいんだけれど、三日でなくッちゃア来られないと言うしさ。それもまだ本統に極まらないんだよ」

「小万さんは三日とも西宮さんで、七草も西宮さんで、十五日もそうだっさ。