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こんにちのどくしゃのせいかく

今日の読者の性格

宮本 百合子

「都新聞」1940(昭和15)年5月19~22日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,197 字 · 13 页

青空文庫

小父貴にでもそれを云われたらともかく一応はふくれるにちがいない娘さんたちが、それと同じ本質のことを、アナトール・フランスの言葉というようなものを引用したらしく文学のように話されれば、何かちがった瞬きようをしてきくという心は、読者の何という可憐さであろう。しかし、生きている人間であってみれば、どこかでおのずからその本質が旧来のものの肯定に立っているのは感じられるのであるから、あらア石川さんと、婦人雑誌の口絵にかたまって覗きこみながら、作者の生きかたというようなものに、文学的に高められた心が発動するというようなきっかけは刺戟されるよすがもない。読者の水準にかこつけて、作家・評論家たちが自己放棄を告白した時から、その人々にとって文学の作品は制作から次第に実務(ビジネス)に変質して来たのだと思う。

島木、阿部という作家たちの読まれかたも、初めの頃は何かを人生的な欲求として求めている読者の心理をとらえて、しかも現実の答えとしては背中合せの本質をもつ作品が与えられていたのであったが、現実への作者たちの向きかたは、その作品の世界の拡大や成育を可能にせず、常識がAと云っていることを、その人らしい云いまわしとジェスチュアとでAという、そこに読者からの特徴の鑑別がおかれざるを得なくなった。