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しゃぼてんのはな
仙人掌の花
山本 禾太郎
「猟奇」1932(昭和7)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,282 字 · 19 页
だが、元より兄や姉に聞くことも、はばかられ、また聞いて見たところで、京阪地方の人達が入込む、温泉の旅館町では、判りそうにも思われなかった。
明日は、二番で立つと云う前の日、午後の三時頃であったが、一個の小包と、手紙が同時に着いた。
その小包を開いて見ると、細い額椽に嵌れた、八号ばかりの油絵と、一冊の本とが這入っていた。
あなたは、明日いよいよお立ちになるそうですね、京都へお帰りになりましたら、ずい分身体を大切にして、幸福にお暮しなさいますように。
この前、申しましたように、画をお送り致します。この画は、御承知の通り、「しゃぼてん」を書いたものです、「しゃぼてん」は、あの青黒い、とげのある醜い形をして居りますが、その頂上に開く小さな花は、血のような、真赤な色をしています。あなたと、おわかれするに臨んで、なぜ私が仙人掌の花を描いたか、それは、恐らく私の一生に、私の口からその理由をお話しすることはあるまいと思います。しかし何時かは――私の死後かも判りません――あなたに判るときがあるような気がします。
この「啄木の詩集」には何の意味もありません、ただ、あなたに差上げようと思うだけです。