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しゃぼてんのはな
仙人掌の花
山本 禾太郎
「猟奇」1932(昭和7)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,282 字 · 19 页
と白ペンキで書き込んだ、ドアが内側から、ギーと低い音を立てて、静かに開いた、そして其石段の上に、一人の若い男が現れた、閑枝は、何故とはなしに、ハッと思った、そして幾分狼狽した心で、歩を移した。
そのあくる日の夕方、閑枝がいつもの通り湖畔の散歩から帰って見ると白い角封筒が机の上に置かれてあった。
私の第一信を、あなたは、どう云う気持ちでお読み下さったでしょうか……、それは、あなたにお尋ねするまでもなく、私によく判っています。
あなたは、私の暗夜を歩むに似た生涯に、一つの燈となって下さいました。長いこと暗の夜に、とじこめられていたものが、急に光りを認めたときの喜こびが私にあの第一信を書かせました。私の心に点じられた火は、次第にあかるくなってゆきました。私は世をうらみ、身をなげく絶望から、蘇って生の喜びを感じさえしました、しかし、それは愚かな私のはかない喜びに過ぎなかったのです。あなた、と云う光りが、次第に強くなればなるだけ、私の苦悩を増す結果を愚な私はあまりの嬉しさに忘れていました。
あけても、暮れても、あなたへの手紙を、私の日記に書き入れることを、仕事にしていた私は、それが次第に耐えられぬ苦痛となって来ました。