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さはしじんごろう

佐橋甚五郎

森 鴎外

「中央公論」1913(大正2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,308 字 · 13 页

青空文庫

次は上官二十六人、中官八十四人、下官百五十四人、総人数二百六十九人であった。道中の駅々では鞍置馬百五十疋、小荷駄馬二百余疋、人足三百余人を続ぎ立てた。

駿府の城ではお目見えをする前に、まず献上物が広縁に並べられた。人参六十斤、白苧布三十疋、蜜百斤、蜜蝋百斤の四色である。江戸の将軍家への進物十一色に比べるとはるかに略儀になっている。もとより江戸と駿府とに分けて進上するという初めからのしくみではなかったので、急に抜差しをしてととのえたものであろう。江戸で出した国書の別幅に十一色の目録があったが、本書とは墨色が相違していたそうである。

この日に家康は翠色の装束をして、上壇に畳を二帖敷かせた上に、暈繝の錦の茵を重ねて着座した。使は下段に進んで、二度半の拝をして、右から左へ三人並んだ。上々官金僉知、朴僉知、喬僉知の三人はいずれも広縁に並んで拝をした。ここでは別に書類を捧呈することなどはない。茶も酒も出されない。しばらくして上の使三人がまた二度半の拝をすると、上々官三人も縁でまた拝をした。上々官の拝がすんでから、上の使の三人は上々官をしたがえて退出した。

家康は六人の朝鮮人の後影を見送って、すぐに左右を顧みて言った。