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びんじょうのずえ

便乗の図絵

宮本 百合子

「光」1948(昭和23)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,614 字 · 19 页

青空文庫

た富をさらいこむのであった。

この地獄の絵図を、わたしたち日本の全人民が自分の生活で味わった。そして、戦争がすんで三年目のきょうの日本では、例年の二倍もはげしい雷雨でびしゃびしゃな駅の構内に、つめかけた群集で徹夜のさわぎをしている。汽車の切符は二倍半にあがる。タバコがあがる。公定価格のすべてがあがる。物価の一一〇倍にたいして、労働賃銀六〇倍のあがりでは誰の暮しも追いつきかね、タケノコ生活はタマネギとなって、もうしんまではいでしまった有様でいる。

闇という真暗なことばが子供の口からさえ洩れるようになってからは、便乗などと、なまやさしい表現は一応すたれたかのように見える。便乗という響には、卑屈ながら、さもしいながら、昼間という感じがある。足許が見えなければ、乗るにも乗れまいというところがあった。闇にまぎれて便乗するにしろ、ステップをてらすライトといった感じである。

闇のくらさは何にたとえよう。ふつう人の生活からひきあげられた便乗は、底の見とおせない独占資本とそれにつながる閣僚・官僚生活の黒雲のなかに巻きあげられて、魔もののようにとび交っている。

この頃、新聞に閣僚や官僚の不正利得が摘発された記事がでるようになった。