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しゅんかん

俊寛

倉田 百三

「新小説」1919(大正8)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,192 字 · 88 页

青空文庫

康頼 あゝ神々よ。

俊寛 わしはその名を呼ぶのがいやになりました。われわれにこの悲運を与えた神に祈るのが。正しきものの名によって兵をくわだてた勇士をかかる悲惨な境遇に陥らしめ、そして王法の敵にかかる栄えをあたうるごとき不合理な神々の前に、乞食のごとくに伏してあわれみを求めることが!

康頼 神々は正しく照覧していられます。耐えしのんで祈ってあきなかったらいつかはわれわれの日がきっと来るでしょう。

俊寛 あなたはほんとうにそう信じるのですか。

康頼 信じています。

俊寛 ほんとうですか。

康頼 ほんとうに信じています。

俊寛 (康頼の顔を見る)うそではありますまいね。

康頼 (顔をそむける)うそではありません。

俊寛 どうぞきょうばかりはほんとうにいってください。わしは一生懸命なのですから。わしを慰めようと思って偽りの証をたてないでください。わしはきょうも熊野権現に日参して祈りました。しかしだめです。わしはほんとうに信じていないのですから。祈りの心はすぐにかれます。わしは宮の周囲にはえた不格好な樹立と、そしてちょろちょろと落ちる谷水を見ていると、何とも言えない欠乏の感じにうたれました。