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ぞくしゅう

俗臭

織田 作之助

「海風 第五巻六号」海風社、1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 页

青空文庫

市治郎は妻と別れて、「芝居裏」で泊った。春松は「芝居裏」は好かぬといって、飛田の遊廓へ行った。伝三郎は自宅で博奕をした。連中に出す酒肴の世話で、伝三郎の妻は徹宵し、時々居眠りをして負けた伝三郎に叱られた。三亀雄もその博奕に加っていたが、途中で勝逃げし、道頓堀のグランドカフェーに出掛けた。そこのナンバーワンのメリーという女を彼は月六十円で世話しているのだった。メリーは仲々いゝ体を持ってるが、狡い。屡々病気の口実を以て、彼を避ける、のは未だ我慢出来るとして、(何故なら彼女も全然男嫌いではないのだから――)時々約束の手渡し以外にせびるのだ。この暮にも、姫路にいる母親が病気で見舞いに行くから、旅費にと四十円無心された。値切って二十五円持たしてやったが、その後会っていない。正月だから帰っている筈だと、カフェーに出掛けたのだ。が、居ない。朋輩のいうところでは、

「見合いに姫路に帰らはったいうことやわ」

見舞いと見合いと何んぼう違いくさるかと三亀雄は腹立った。博奕で二百円もうけたことを想い出して一寸心が慰った。児子家の娘達は、安らかに寝た。寝る前に、皆、オリーブ油を顔につけた。