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しゅぜんじものがたり
修禅寺物語
岡本 綺堂
「文芸倶楽部」1911(明治44)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,737 字 · 26 页
頼家 ええ、退け、のけ。
かつら まずお鎮まりくださりませ。面はただ今献上いたしまする。のう、父様。
(夜叉王は黙して答えず。)
五郎 なに、面はすでに出来しておるか。
頼家 ええ、おのれ。前後不揃いのことを申し立てて、予をあざむこうでな。
かつら いえ、いえ、嘘いつわりではござりませぬ。面はたしかに出来しておりまする。これ、父様。もうこの上は是非がござんすまい。
かえで ほんにそうじゃ。ゆうべようやく出来したというあの面を、いっそ献上なされては……。
僧 それがよい、それがよい。こなたも凡夫じゃ。名も惜しかろうが、命も惜しかろう。出来した面があるならば、早う上様にさしあげて、お慈悲をねがうが上分別じゃぞ。
夜叉王 命が惜しいか、名が惜しいか。こなた衆の知ったことではない。黙っておいやれ。
僧 さりとて、これが見ていらりょうか。さあ、娘御。その面を持って来て、ともかくも御覧に入れたがよいぞ。早う、早う。
かえで あい、あい。
(かえでは細工場へ走り入りて、木彫の仮面を入れたる箱を持ち出づ。桂はうけ取りて頼家の前にささぐ。頼家は無言にて桂の顔をうちまもり、心少しく解けたる体なり。