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はいゆうせいかつについて

俳優生活について

宮本 百合子

「テアトロ」1946(昭和21)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,144 字 · 6 页

青空文庫

芸術上に蒙る損傷の形は多様である。文学がジャーナリズム、出版企業に従属する面が多いから、戦争進行プラス企業の追随で益々低落した。劇壇の人々は自身の芸術的生涯と興行資本というものについて、どう考えるのだろうか。

手許にプログラムがなくて正確に云えないけれども、「プラーグの栗並木の下で」に一人、生活態度のフヤフヤな若い医者が登場する。その人物は性格の弱い、動揺的な人物として描かれているのだが、その役をうけもった若い俳優は、この人物を表現するのに非常な困難を示した。もっと機械的な、張りこの虎めいた勇ましい人物でも演ずるのであったら、その若い俳優はもっと空々しく、自分からつきはなし、型で、三流的まとまりのついた芝居をやったかもしれない。ところが、その俳優の役は、生活態度のふっきれない、決断のしにくい、社会現象のうちにある歴史的な意味や価値をすぐつかめない崩れた感覚の若者であってその人物の性格が、俳優の現実的人間性と絡んで、大きい困難を呈出した。その若い俳優は、自分の精神と肉体とでその崩れやすい人物を十分に描き出そうとすると、どうにもかくせず、俳優自身の生活のくずれがその鉤にひっかかって表面に釣り出されて来たのであった。