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はいくのつくりよう
俳句の作りよう
高浜 虚子
「ホトトギス」1913(大正2)年11月~
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,854 字 · 91 页
むしろ頓知などという言葉とは反対に、一心にものに案じ入ることによってできるのであります。
芭蕉の弟子にはいろいろの人がありました。が、中でもっとも頓知というようなことに遠かった人は去来のように考えられます。この人の俳句を見るといかにも愚鈍らしいところがみえます。愚鈍といったところで、むしろいい意味の愚鈍でいやに才走ったところは少しもなく、実直な、鈍重な風格を備えているのであります。
近代人の句にはいかなる人の句にもこの鈍重の趣を欠いております。これは時代の相違もあることで、今の人に元禄時代の去来のような句を作れと言ったところでそれは無理かもしれませんが、しかしその鈍重の趣を欠く理由の一つにはこのじっと案じ入ることの修業が足りない点があります。
試みに去来の句を二、三句抜き出してきてこの辺の消息を少しお話ししてみましょう。
湖の水まさりけり五月雨 去来
これは去来の句といえば誰も第一に持ち出すほど有名な句でありますから、まずこの句について吟味してみましょう。句意はきわめて明白で五月雨の降るころ近江に行ってみると、あの広大な琵琶湖の水が降り続く雨のために増しておった、というのであります。