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いつわりのないぶんかを
偽りのない文化を
宮本 百合子
「女性改造」1948(昭和23)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,161 字 · 18 页
は日本でもベスト・セラーズの一つであった。小説をよむほどの若い人々はみんなよんで、一九四七年度の感銘された作品の一つとした。「凱旋門」のどの点に、こんにちの若い日本の精神をとらえた魅力の核があったのだろう。あの小説よかったわ、というひとたちに向って、いちいちその読後感のよりどころをたしかめようとしたら、おそらく答えさせられるひとは迷惑しか感じないのではなかろうか。だって、よかったんですもの。――
「凱旋門」のなかには、その人たちの生活感情のうちにひそんでいて、しかも日ごろはそこに触れられることのない人間的な要素に、なにかの角度からおとずれてゆく情感があったからにちがいない。それはなんだったろう。医師ラヴィックの生活をとおして全面に描き出されている旧いヨーロッパの秩序の崩壊に対するやきつくように鋭い意識とその意識につらぬかれつつそれをもちこたえてゆくダイナミックで強靭な感覚と神経。「凱旋門」が日本の若い人々を魅した秘密はそこにあるのではなかろうか。
この推定は、無根拠ではない。何故なら、旧い日本は一九四五年八月十五日にわれわれの内と外とで音たかく壊滅したはずだった。