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びぜんてんいちぼう
備前天一坊
江見 水蔭
「現代大衆文学全集」平凡社、1928(昭和3)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,511 字 · 25 页
改めてその方に御目通りゆるされるぞ」
「うへえ――」
半田屋九兵衛思わず畳へ額をすり付けた。
「いや、そんなに恐れ入るのはまだ早い。その様に仔細も承わらず恐れ入っては、この先の御用にも差支える。一応事情は申し述べる。その上にて、その方、金三郎様の御宿を致すのが迷惑と存ずるなら、遠慮なく申出でよ。早速我等は他に転宿致す。東中島の児島屋勘八、あの店の方が居心が好いように思われるで」
「どう致しまして、まず、まず」
三
浪人小笠原金三郎、同じく駒越左内、医師奥野俊良、これだけが半田屋九兵衛方に当分宿泊となった。主人はもう有頂天で、三人を福の神扱いにした歓待ぶり。別して金三郎には、離れの隠居所を寝室に宛てがって、一人娘のお綾が侍女代りに付き切りであった。
「大変な事になって来た。今に九兵衛は帯刀御免、御褒美の金はどれくらいであろうか。イヤ一時に千両二千両頂くよりも、何か物産一手捌きの御役目でも仰せつけられた方が、得分が多かろうで」とまるで夢中。
「まァ一体、どうした事で御座りまする」
妻のお幸は煙に巻かれてばかりはいなかった。
「他聞は憚る一大事じゃが、しかし女房は一心同体。