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きずだらけのあし
傷だらけの足
宮本 百合子
ふたたび純潔について
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,697 字 · 20 页
因習によって無知にされ、そのかげでは人間性の歪められている性の問題のカーテンを、ゆすぶらせたのであった。
卑俗な多くの人々にとって、ローレンスが卑猥であったなら、もっと堪えやすかったろう。なぜなら、卑猥に人々は馴れている。体面をつくろう偽善、上品ぶって見て見ぬふりは、それらの人々の処世の態度なのだから。しかしローレンスが性について語るとき、彼と彼女とは裸の神々のようにむき出しで、自然がその営みにおいてそうであるように、それ自体充実したコースをたどって、かくしだてがない。そのような公明正大な性のあらわれに対して、おどろかされた人々は、どうとがめていいか分らず、しかもだまっていられない衝動にうごかされる。自分たちに信じられないおおっぴらさで、きまじめさで、フランネル・シャツの男が、自分たち階級におとなしく帰属しているべきはずの女を性の自覚と解放に誘ってゆく。――D・H・ローレンスをしつこく非道徳漢として糺弾したのは、彼と別の社会群に属す男たちの不安と嫉妬であったといえるかもしれない。
D・H・ローレンスは、あらゆる自然現象のうちに、ほとんど神秘主義に近い生命感をうけとった作家であった。