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ぼくはこれからだ

僕はこれからだ

小川 未明

「新児童文化 第3冊」1941(昭和16)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,555 字 · 17 页

青空文庫

彼は、絶体絶命を感じた。数秒の後に、自分の体が、幾十尺の高いところから地上に落下して粉砕するのだと意識するや、不思議にも、気力が出て跳ね上がった。彼は、   屋根を蹴ると、眼下の大木を目がけて、それにしがみつこうとして飛んだ。

軽業師にやれる離れわざなら、なんで人間生死の瀬戸際にできぬというはずがありましょう。

達吉は、天地が真っ闇だった。大波が、自分を呑んだ。体は前後上下に揺れていた。わずかに、目を開けると、しっかりと自分はけやきの木の枝にしがみついていた。

「おお、己は、生きているぞ! 己は、助かったのだ。お父さんに誓います。僕は、軍人になります。神さまに誓います。僕は、かならず飛行兵になります。」

とっさに、希望が頭にひらめいた。どこを見てもただ明るく、さんらんたる光のうちにいるのを発見した。どこかで、がやがや人の声が、きこえるような気がしたけれど、達吉は、ただ、手足に力を入れて、どうしても強く生きなければならぬということだけしか考えていなかった。

このときの、彼の目は、からすの目よりも、さとくいきいきと輝いて、いったん心につかんだものを一生逃すまいとしていました。